お父さん、チビがいなくなりました ネタバレ感想 熟年夫婦の問題
西炯子「お父さん、チビがいなくなりました」は、読んでみると非常にほっこりとして、なおかつジーンと胸にくる漫画です。
亭主関白で「おい」しか言えない旦那と、「はいはい」と何でも至れり尽くせりの妻。
44年もの結婚生活に波風など立たなかったのに、3人の子供たちが巣立って、ふたりきりの寂しい家にいると、ふと胸にポッカリと穴があいたようになってきて・・・
飼い猫がいなくなって、離婚危機に
結婚してから44年連れ添った老夫婦。妻の有喜子は大和撫子系で、旦那の言うことにはなんでもはい、というタイプ。一方、旦那のほうは「おーい」としか妻に声をかけない、昭和一桁系の男。
旦那が「おーい」と言うだけで、有喜子は旦那が何をほしがっているのか、全部わかってしまうほど、夫婦の阿吽の呼吸ができあがっています。そんなツーカーな夫婦なのに、有喜子は最近、なんだか虚しさを感じていました。ふたりきりの食卓で、他愛もない世間話をしても、テレビばかり見て返事もしない夫。
他所の熟年夫婦は旅行にでかけたりしているのに、こちらは新婚旅行以来、どこにも行ったことがなくて・・・他所の仲が良さそうな夫婦を見てしまうと、愛想のない旦那と見比べてしまって・・・
有喜子は娘にふと「別れようと思っているの」ともらしてしまいます。まだそのことは旦那に言わなかった有喜子でしたが、飼い猫のチビがいなくなってしまい、心配する有喜子に旦那が他人事のような言葉を投げかけて・・・
長い夫婦関係を見直したくなる漫画
この漫画は長年連れ添ってきた熟年夫婦が直面する危機を、見事に描いています。旦那は不器用な男で、本当は妻のことを誰よりも大切に思っていたのに、その思いを本人にまったく伝えられなかったのです。44年間も(笑)
そして、離婚の危機、という夫婦関係の問題を経て、旦那ははじめて妻に自分がいかに彼女を愛してきたのか、やっと言葉にできるのです。
熟年夫婦の離婚危機を描いたこの漫画、ぜひおすすめしたい内容です。